【完全ガイド】骨盤底筋トレーニングの効果と正しい鍛え方

こんにちは。理学療法士の監修のもと、骨盤底筋トレーニングについて詳しく解説していきます。この記事では、基礎知識から効果的なトレーニング方法、さらには継続のコツまで、誰でも実践できる内容をお届けします。

目次

1. 骨盤底筋の基礎知識と重要性

骨盤底筋とは

骨盤底筋は、骨盤の底に位置する筋肉群の総称です。骨盤の底に位置する、恥骨、尾骨、坐骨を結ぶように存在し、まるでハンモックやトランポリンのように骨盤内臓器(膀胱、膣(女性)、直腸)を下から支える構造をしています。この筋肉群は、以下の4つの重要な役割を担っています。

  1. 骨盤内臓器のサポート
  2. 排尿・排便のコントロール
  3. 姿勢の維持
  4. 性機能のサポート

なぜ骨盤底筋が重要なのか

骨盤底筋が衰えると、様々な症状が現れる可能性があります:

  • 尿漏れ(特に腹圧性尿失禁:咳やくしゃみ、運動の際に漏れる、トイレに間に合わない)
  • 頻尿
  • 便秘
  • 腰痛
  • 性交痛(女性)
  • 骨盤臓器脱(女性)
  • 勃起不全、早漏(男性)

特に女性は、妊娠・出産や閉経、便秘、骨盤底筋への慢性的な負荷などの様々な理由にによって、骨盤底筋にストレスがかかりやすい傾向にあります。また、デスクワークの増加や運動不足も、骨盤底筋の機能低下を引き起こす可能性があります。

骨盤底筋に関連する症状は身体症状だけでなく、心理的・社会的にも影響をおよぼします:

  • 自尊心の低下
  • 不安やストレスの増加
  • うつ傾向
  • 社交不安
  • 外出の減少
  • 仕事への支障
  • 睡眠の質の低下
  • 活動量の減少
  • 趣味や娯楽の制限
  • 親密な関係への影響

骨盤底筋が弱化する要因

体の自然な変化による要因(生理的要因)

私たちの体は年齢と共に日々変化しています。加齢とともに起こる体の変化として:

  • 加齢による筋肉の衰え
  • 女性ホルモンの減少(女性)
  • 皮膚や筋肉の張りの低下(軟部組織の弾力性低下)
  • 神経の働きの鈍化(神経伝達の変化)

妊娠・出産による身体への負担として:

  • お腹の赤ちゃんの重みによる負担
  • 出産時の骨盤底の伸び(骨盤底伸展)
  • 妊娠・出産に伴うホルモンの変化
  • 産後の回復不足

生活習慣による要因

日々の生活習慣が骨盤底筋の衰えを助長させているかもしれません。当てはまるものがある人は生活習慣を見直し、改善できるものから取り組んでみてください。

  • 運動不足
  • 姿勢の問題:
    • 長時間座りっぱなし
    • 不適切な姿勢(悪い姿勢)
    • 重い物の持ち上げ方(腰を丸めて持ち上げる)
  • 生活習慣病との関連:
    • 肥満
    • 糖尿病
    • 高血圧
    • 便秘

2. 科学的根拠に基づくトレーニング方法

骨盤底筋トレーニングは、1940年代にアーノルド・ケーゲル博士によって確立された手法が基礎となっています。ケーゲル博士の名前から「ケーゲル体操」とも呼ばれています。以後、様々な研究によってその効果が実証され、現代では尿漏れの予防や改善に対する第一選択の治療法として世界的に推奨されています。

実践する前に知っておいてほしいこと

骨盤底筋が適切に動くためには、収縮(力を入れる)と弛緩(緩める)、どちらも十分にコントロールできる必要があります。収縮と弛緩を切り替えることで、骨盤底筋は正常に機能するようになっています。

骨盤底筋トレーニングというと、収縮(力を入れる)に焦点が当てられがちですが、弛緩(緩める)ことも同じくらい重要だということを覚えておいてください。実際に、骨盤底筋が適切に収縮(力を入れる)できているものの、上手く弛緩(緩める)できない人もいます。

肩や腰などでイメージすると分かりやすいのですが、肩や腰回りの筋肉もガチガチにかたまっている人がいます。この場合、筋肉の過活動(必要以上に力が入ってしまう)や過緊張(筋肉の過剰な緊張状態が持続している)が起きています。このような現象が骨盤底筋にも起こるということです。

反対に、骨盤底筋を適切に収縮させることが出来ない人もいます。

骨盤底筋トレーニングの注意点

前述した通り、骨盤底筋の状態(収縮できないタイプなのか、弛緩できないタイプなのか)によって、意識するポイントやトレーニング方法が変わってきます。

例えば、上手く緩められないタイプの場合には、まずはストレッチなどから始め、骨盤周囲を適切に緩めてから、力を入れる練習をする、といった具合です。

とは言っても、自分がどちらのタイプかを判断するのは難しいですよね。

全ての人に骨盤底筋トレーニングが最適な方法ではない、ということを頭に置いて、まずは基本的な骨盤底筋トレーニングをやってみましょう。骨盤底筋が弛緩(緩める)できないタイプの場合、骨盤底筋トレーニングによって症状が悪化する場合もあります。この場合は無理に継続しないようにして、専門家に相談してみましょう。

収縮(力を入れる)できないタイプの場合、適切にトレーニングが実践できれば非常に効果的です。もし症状が改善しない場合、力の入れ方が間違っている可能性もあるので、ゆっくり丁寧に確認しながら行いましょう。

基本的な収縮運動(ケーゲル体操)

正しい姿勢(基本的な姿勢)

  • 仰向けに寝る(初心者におすすめ)
  • 椅子に座る(骨盤を立て、良い姿勢)
  • 立位(骨盤を立て、良い姿勢)

骨盤底筋の意識の仕方

実際のトレーニングに入る前に、まずは正しい筋肉を意識できるようになることが重要です。以下のような感覚をイメージしながら練習してみましょう:

  • おしっこを我慢するような感覚
  • 膣や肛門を軽く締めるような感覚
  • 骨盤底全体(股の部分)を上へ持ち上げるイメージ
  • 性器を中に引き込むような感覚
  • 陰茎を短くするような感覚

ただし、実際のトイレでこの練習をすることは推奨されません。排尿障害の原因となる可能性があるためです。あくまでもイメージトレーニングとして活用してください。

基本的なトレーニング手順

  1. 5秒間かけてゆっくり締める
  2. 5秒間保持する
  3. 5秒間かけてゆっくり緩める
  4. 10秒間リラックス
  5. これを10回を1セットとして、1日3セット行う

※秒数はあくまで目安です。

段階別エクササイズ

効果的なトレーニングのためには、段階的なプログラムの実施が推奨されています。ここでは、4週間のプログラムをご紹介します。

STEP
初級段階(1-2週目)
初めの2週間は、基本的な動きの習得と筋肉の認識に重点を置きます。

基本プログラム

  • 実施回数:1日3セット
  • 1セットの内容:
    1. 5秒かけて締める
    2. 5秒間保持
    3. 5秒かけて緩める
    4. 10秒間休憩
    5. これを5回繰り返す

このとき、以下の点に注意を払いましょう:

  • 呼吸を止めない
  • お尻や太もも、お腹に力が入りすぎていないか確認する
  • 疲労を感じたら途中で休憩を入れる
STEP
中級段階(3-4週目)
基本的な動きを習得できたら、少しずつ難易度を上げていきます。

プログラムの発展

  • 実施回数:1日4-5セット
  • 1セットの内容:
    1. 8秒かけて締める
    2. 8秒間保持
    3. 8秒かけて緩める
    4. 10秒間休憩
    5. これを8回繰り返す

日常生活動作の中で骨盤底筋トレーニングを行ってみましょう:

  • 歩行しながらの収縮運動
  • 家事の最中の意識的な収縮
  • 座位作業中の定期的な運動
STEP
上級段階(5週目以降)
基本的な運動が習得できたら、さらに効果的なトレーニングを目指します。

複合的なエクササイズ

  1. スクワットとの組み合わせ
    • 膝を曲げる際に骨盤底筋を意識的に収縮
    • 呼吸と動きを連動させる
    • 姿勢の安定性を確認
  2. ブリッジポーズ(お尻上げ)の活用
    • 骨盤底筋を意識しながら臀部を持ち上げる
    • 背中の反りすぎに注意
    • 開始姿勢:仰向けで両方の膝を立てる
  3. ヨガやピラティスなど体幹トレーニングの実践
    • 全身の筋バランスを整える
    • 呼吸法との連動
    • 心身のリラックス効果も期待

トレーニング時の重要なポイント

呼吸法の活用

トレーニング中の呼吸は非常に重要です。以下のポイントを意識しましょう:

  1. 基本的な呼吸パターン
    • 収縮時:軽く息を吐きながら
    • 保持中:自然な呼吸を続ける
    • 弛緩時:ゆっくりと息を吸う
  2. 腹式呼吸との連動
    • お腹を柔らかく保つ
    • 息を吸ったときにお腹が膨らむ
    • 息を吐いた時にお腹が凹む(力まない)

強度の調整方法

効果的なトレーニングのために、以下の点に注意して強度を調整します:

  1. 適切な負荷の見つけ方
    • 疲労感を感じない程度の強さ
    • 痛みを感じない範囲
    • 呼吸が止まらない程度
  2. 段階的な負荷の増やし方
    • 保持時間の延長
    • セット数の増加
    • 実施頻度の調整

このように、科学的な根拠に基づいたトレーニング方法を、自身の状態に合わせて実施することで、より効果的な骨盤底筋の強化が期待できます。次のセクションでは、これらのトレーニングを日常生活に無理なく取り入れるコツについて解説していきます。

3. 生活習慣に組み込むトレーニングのコツ

朝型トレーニングスケジュール

  • 起床時:ベッドの上で基本的な収縮運動
  • 朝の身支度中:洗面所での立位トレーニング
  • 通勤中:電車やバスでの座位トレーニング

夜型の人向けルーティン

  • 帰宅後のリラックスタイムに合わせて実施
  • お風呂でのトレーニング
  • 就寝前のストレッチと組み合わせる

仕事中にできる簡単エクササイズ

  • デスクワーク中の座位トレーニング
  • 休憩時のストレッチ
  • トイレ休憩時の立位トレーニング

継続のためのモチベーション管理

  • カレンダーでチェック
  • アプリを活用した記録
  • 定期的な効果の確認
  • 同じ目標を持つ仲間作り

4. よくある間違いと注意点

NGな動作

  • お尻の筋肉だけを強く締める
  • 腹筋に過度な力を入れる
  • 呼吸を止める
  • 急激な動作

修正方法

  1. 鏡を見ながらの練習
  2. 専門家への相談
  3. 動画での確認
  4. 段階的な負荷増加

過度なトレーニングのリスク

  • 骨盤底筋の緊張過多
  • 排尿・排便困難
  • 骨盤痛
  • 腰痛

痛みが出た時の対処法

  1. すぐにトレーニングを中止
  2. リラックス法を実践
  3. 必要に応じて医師に相談

5. 効果を実感するまでのタイムライン

1週間後

  • 骨盤底筋を意識できるようになる
  • 正しい収縮方法の習得
  • 基本的なトレーニングの習慣化

1ヶ月後

  • 軽い尿漏れの改善
  • 骨盤底の安定性向上
  • トレーニングの難易度アップが可能

3ヶ月後

  • 明確な症状の改善
  • 体幹の安定性向上
  • 日常生活での不快感軽減

個人差への配慮

  • 年齢による回復の違い
  • 症状の重症度による違い
  • 生活習慣による影響
  • 継続的なセルフチェックの重要性

まとめ

骨盤底筋トレーニングは、正しい知識と継続的な取り組みが重要です。この記事で紹介した方法を参考に、ご自身の生活リズムに合わせて無理のない範囲で始めてみてください。

なお、以下のような症状がある場合は、必ず医師に相談してからトレーニングを開始してください:

  • 重度の尿漏れ
  • 骨盤臓器脱
  • 強い痛み
  • 妊娠中や産後間もない時期

文/大西安季(理学療法士/スポーツ医学博士)

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