こんにちは。今回は、特に働く世代に多い「頻尿」について、日常生活に取り入れやすい対策を中心にご説明します。
そもそも頻尿とは?
医学的には、1日の排尿回数が8回以上を「頻尿」と呼びます。特に夜間に2回以上トイレに行く場合は「夜間頻尿」と呼ばれています。
日本排尿機能学会の調査(2020年)によると、40代以降の男女の約42%が頻尿の症状を自覚しているとのことです。しかし、「恥ずかしい」「年齢のせいだから仕方ない」と、一人で悩んでいる方が多いのが現状です。
頻尿って、どんな状態?
通常、成人は1日4~7回くらいトイレに行くと言われています。でも、それ以上の回数になると頻尿の可能性が。特に、仕事中や外出時にトイレが気になったり、日常生活に支障がでてきたり、精神的にストレスを感じて困るようになったら要注意です!
自分でチェック!頻尿かも?と思ったら
以下のようなことはありませんか?
- 1日に8回以上トイレに行っている
- 夜中に2回以上起きている
- 「急に!」トイレに行きたくなることが多い
- 外出時は常にトイレの場所を確認している
1つでも当てはまる項目があれば、頻尿の可能性があります。でも落ち込むことはありません!年齢や生活習慣が関係していることも多いので、早めに対策すれば改善できる可能性があります。
気になる症状がある方は、これから紹介する対策を生活に取り入れてみてください。それでも改善が見られない場合には、泌尿器科の専門医に相談してみましょう。
頻尿が仕事や生活に与える影響
頻尿は「ちょっとしたこと」と思われて見過ごされがちですが、仕事や日常生活に大きな影響を及ぼします。
睡眠の質の低下
夜間のトイレに起きることにより深い睡眠が取れなくなります(夜間頻尿)。その結果、日中の眠気や疲労感が増加し、仕事の生産性が低下したり、判断力が落ちたり、イライラして余裕がなくなったりしてしまいます。睡眠不足が続くと、免疫力の低下にもつながる可能性があります。
集中力の低下
頻繁なトイレによって仕事の集中力が途切れてしまいます。特に重要な会議や商談中のトイレ意識は、パフォーマンスに大きく影響を与えることがあります。
行動の制限
通勤時や外出先でのトイレ問題を心配するあまり、行動が消極的になってしまいます。電車での移動時間や、トイレの場所を常に気にしながらの生活は大きなストレスとなります。
人間関係への影響
頻繁なトイレ離席が必要な状況は、職場での人間関係にも影響を与えることがあります。特に長時間の会議や研修の際に、周囲の理解を得られにくい場合もあります。
運動不足
トイレが心配で運動や外出を控えてしまうことで、運動不足に陥りやすくなります。これは体力低下や生活習慣病のリスク増加にもつながります。
頻尿の主な原因
膀胱の過敏性(過活動膀胱)
膀胱が自分の意思とは関係なく収縮し、急に尿意を感じる状態です(まだ尿が少ししか溜まっていないにも関わらず、脳にに溜まっている信号を出してしまう)。これにより、トイレに何度も行く必要が生じます。
残尿量の増加
排尿後にも膀胱内に尿が残る状態で、前立腺肥大症や神経因性膀胱などが原因となります。残尿があると、膀胱の容量が減少し、頻繁にトイレに行くことになります。
多尿
糖尿病や水分摂取量の増加などによって、1日の尿量が増えることがあります。この場合、1回の排尿量は正常でも、トイレに行く回数が増えます。
尿路感染や炎症
膀胱炎や前立腺炎などの感染症が原因で、膀胱の知覚神経が刺激されて頻尿になります。
心因性要因
ストレスや不安などの心理的な要因によって、実際には膀胱や尿道に問題がないにもかかわらず、トイレに行きたくなることがあります。特に緊張する場面でこの傾向が強まります。
なぜ40代から頻尿が増えるのか?
1. 加齢による膀胱機能の変化
膀胱の容量減少
若い頃は300-500ml程度あった膀胱の容量が、加齢とともに徐々に減少していくことがあります。膀胱の壁は尿量の変化に伴って、伸びたり縮んだりを繰り返していますが、これが伸びにくくなると、1回で溜めておくことのできる尿の量が少なくなります。
膀胱の弾力性低下
風船のように伸び縮みする膀胱の筋肉が、年齢とともに硬くなってきます。その結果、尿を溜める力が弱くなり、少量でもすぐに尿意を感じやすくなります。
2. ホルモンバランスの変化
女性の場合
更年期に入ると女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで、以下のような変化が起こります。
- 膀胱や尿道の粘膜が薄くなり、刺激に敏感になる
- 骨盤底筋が弱くなり、尿もれのリスクが高まる
- 膀胱を支える組織が弱くなることで、膀胱の位置が下がる
男性の場合
- 前立腺の肥大(厚生労働省の統計では、50代で約30%、60代で約60%の方が経験するとされています)
- 男性ホルモン(テストステロン)の低下による膀胱機能への影響
- 前立腺肥大により尿道が圧迫され、尿の出が悪くなる
3. 生活習慣との関連
- 糖尿病:血糖値が高くなると、余分な糖分を尿として排出しようとするため、尿量が増加する
- 高血圧:降圧剤(利尿作用のある薬)の影響で尿量が増えることがある
- 睡眠時無呼吸症候群:夜間の酸素不足により、体内でホルモンバランスが乱れ、夜間の尿量が増加する
働く世代必見!具体的な頻尿対策
オフィスワーク中の工夫
背筋を伸ばして座る
猫背になると骨盤底筋に余分な負担がかかります。30分に1回は姿勢を意識的に正してみましょう
時間管理のコツ
- 重要な会議や商談前の2時間は水分摂取を控えめにしてみましょう
- 長時間の会議は、可能な限り休憩時間を入れてもらうようにしましょう
水分管理の工夫
- 朝~夕方までにしっかり水分補給
- 就寝2-3時間前からは控える
- カフェイン含有飲料(コーヒー、緑茶など)は午前中に控えめに摂取
- アルコールには利尿作用があるため、夜の飲酒は適量を心がける
- 炭酸飲料は膀胱を刺激するため、控える
仕事中でもできる『骨盤底筋トレーニング』
骨盤底筋は、骨盤内臓器(膀胱、子宮(女性のみ)、大腸)を支える重要な筋肉群の総称です。骨盤底筋トレーニングはおしっこを我慢するときに使う筋肉を意識的に鍛える運動です。自分で手軽に行うことができるため、日常生活に取り入れやすいのが特徴です。今日から骨盤底筋トレーニングをはじめてみましょう。
基本的なトレーニング方法
- 1. 基本姿勢を確認しましょう
まずはリラックスした姿勢をとり、背筋を伸ばして座るか、仰向けに寝転びます。立っている場合にも、背筋がすっと伸びた姿勢をとります。体の緊張を解きほぐし、深呼吸をして落ち着きましょう。
- 2. 骨盤底筋を意識する
骨盤底筋を意識して力を入れます。普段意識しない筋肉ですので、最初は少し分かり難いかもしれません。肛門、尿道、膣/ペニス、全体を引き上げるイメージです。
具体的には、「おしっこを我慢する」「おならを我慢する」「肛門を閉める」ように軽い力を入れたときに骨盤底筋が収縮(力が入る)します。他にも、女性では「膣を締めるように」、男性では「ペニスを根元から持ち上げるように」力を入れることで骨盤底筋が収縮します。この状態を5秒程度キープし、その後ゆっくりと力を緩めます。
力を入れる方にばかり意識が向きがちですが、緩めることも重要ですので、力を入れる、緩めるをセットで行って下さい。
- 3. 繰り返し行う
「締める(軽~く、力を入れる)」と「緩める(ジワ~っと力を抜く)」を、5回程繰り返してみましょう。感覚が掴めてきたら10回に増やして、1日3セットを目安に行います。
最初は自分が意識しやすい場所に力を入れる練習からはじめましょう。肛門を閉める感じが分かりやすいという人が多いですが、人によって様々です。おしっこを我慢する感じが分かりやすい人もいれば、膣やペニスに力を入れる感じが分かりやすい人もいます。慣れてきたら、意識しにくい場所にも力を入れる練習をして、どの場所も意識しやすくなるように続けていきます。
- 4. 姿勢を変えて行う
座った姿勢、立った姿勢、仰向けの姿勢など、さまざまな姿勢で骨盤底筋を収縮(力を入れる)ことで、筋肉の働きを高めることができます。これによって、日常生活の尿漏れが生じる場面や動作にも対応できるようになります。
1番易しい姿勢は仰向けの姿勢です。座った姿勢、立った姿勢では骨盤底筋(骨盤の底)に内臓の重みや重力がかかっているので、その重みに抗って骨盤底筋を収縮する(力を入れる)必要があるからです。ですので、感覚がよく分からないという人は仰向けの姿勢からはじめましょう。最終的にはどの姿勢でも収縮できる状態を目指します(続ければできます!)。
仰向けでも分からない人は四つ這いの姿勢が分かりやすい場合もありますので、分からないからと言ってあきらめずに試してみてくださいね。
食事の管理と工夫
塩分管理のコツ
- 汁物は具沢山にして、汁を飲む量を減らす
- 醤油やソースは最後にかけるのではなく、つけて食べる
- 「減塩醤油」など、減塩調味料を常備する
- 外食時は味の濃い味付けや塩分の多いメニューを避ける
野菜摂取のポイント
- 生野菜サラダよりも温野菜を中心に
- 生野菜は水分量が多いため、夜は控えめにします
- 根菜類(大根、人参など)を積極的に
- 食物繊維が豊富で、むくみ予防にも効果的です
夕食の注意点
- 就寝3時間前までには済ませる
- 塩分の多い食品は控えめにする
- 水分の多い食材は昼間に摂る
睡眠の質を上げる工夫
就寝前の習慣づくり
- 入浴は就寝1時間前までに済ませる
- 就寝前のストレッチで体をリラックス
- スマートフォンの使用は控える
寝室の環境整備
- 室温は18-22度、湿度は50-60%が理想的
- 枕の高さを適度に調整し、首や肩の緊張を和らげる
医療機関での治療
一般的な検査項目
- 問診:症状の詳しい経過や生活習慣など
- 尿検査:尿の成分や感染の有無を調べる
- 超音波検査:膀胱や前立腺の状態を確認
- 残尿測定:排尿後の残りの尿量を測定
主な治療薬
- 抗コリン薬(膀胱の過剰な収縮を抑える薬)
- β3作動薬(膀胱を弛緩させる薬)
- 漢方薬(体質改善を目的とした薬)
- 利尿剤の調整(むくみがある場合に使用)
頻尿に関するQ&A
頻尿についての疑問や不安を解消するために、よくある質問とその回答をまとめましたので、参考にしてみてください。
- 仕事中のトイレ休憩が多いことを上司に相談したほうがいいですか?
頻尿が業務に支障をきたす場合は、医師の診断書をもとに上司や産業医に相談することをお勧めします。適切な配慮を受けることで、より働きやすい環境を整えることができます。
- 市販薬と病院の処方薬はどう違いますか?
市販薬は一時的な症状緩和が目的ですが、病院での処方薬は原因に応じた治療が可能です。また、持病がある場合は薬の相互作用も考慮する必要があるため、医師による適切な処方が重要です。
- デスクワーク中でもできる運動はありますか?
はい。骨盤底筋体操は座ったままでも可能です。また、30分に1回は立ち上がって軽い運動をすることで、骨盤周りの血流が改善されます。
- トイレを我慢するのは良くないのでしょうか?
過度な我慢は膀胱の機能を低下させるため危険です。ただし、適度な間隔(2-3時間程度)で排尿することは、膀胱の訓練になります。
- 夜間頻尿を改善するコツはありますか?
夕方以降の水分管理、就寝前の飲酒を控える、足を温めて血流を改善する、着圧ソックスの使用などが手軽に試せる対策です。有効性が示されている薬もあるため、泌尿器科に相談するのも1つです。
おわりに
頻尿は40代以降の働く世代にとって身近な悩みです。しかし、適切な生活習慣の改善と必要に応じた医療機関の受診により、多くの場合症状を改善することが可能です。
一人で悩まず、まずは今回ご紹介した対策を少しずつ試してみてください。そして、気になる症状が続く場合は、かかりつけ医や泌尿器科の専門医に相談することをお勧めします。
*本記事は一般的な情報提供を目的としています。個々の症状や状態は人によって異なりますので、医療に関する判断は必ず医師にご相談ください。
文/大西安季(理学療法士/スポーツ医学博士)
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